きたごう行政書士事務所よりお知らせ

補助金のつかいかた【飲食業編】

2021年11月9日

補助金には様々な種類や申請方法があるため、「どういった補助金が使えるのかわからない」「経費は何に使えるのかわからない」といったご相談から、色々な補助金の情報がごっちゃになってしまっていたり情報が錯綜してしまっていたりして、なかなか申請に踏み切れないという状況もあるのではないでしょうか。

そこで今回は、補助金の正しい利用法を業種ごとに分けてお話ししようと思います。

題して「補助金のつかいかた」です。

飲食業編

clear long stemmed wine glass on brown table
Photo by Valeria Boltneva on Pexels.com

飲食店の事業者さんの場合、今、このご時世での営業は薄氷の上を進むようなものであり、いつ、また感染症が再拡大して、飲食店だけがやり玉にあげられるかわかったものではありません。

緊急事態宣言下では営業もままならないのですが、やはり前を向いてやってゆく必要があります。

そんな中で「どういった営業を行ってゆくか」または「どうやって事業を継続してゆく力をつけてゆくか」こうした課題はできるだけ早く、解決の糸口を見つけなければなりません。

ステップ1、自社の事を知る

例えば、補助金を使って新しい事業を始める。とした場合、「どんな補助金が使えそうなのか」を明確にする必要があります。

そして、どんな補助金が使えるかというのは「自社(お店)の現在状況」がどこにあるのかで明確に変わります。

そこで、まず、下記の情報を書き出してみましょう。

■ 従業員人数

例えば、一般的な飲食店で「従業員数」が5名以下の場合、「小規模事業者」となり、やりたい計画によっては専用の補助金等が使える可能性があります。

また、これに関しては基本的に「会社全体」での従業員数です。

■ 売り上げの推移

新型コロナウイルス感染症もあり、売上が落ちていたり、2021年10月の緊急事態宣言下序後、売上が回復したなどの要因は補助金利用の要件となっていたりするので、まずは書類をまとめて、どういった状況にあるのか、確認しておきましょう。

■ お客さんの特徴

今後の事業で、どういったお客さんにアピールできるかを考えます。まずは既存の顧客の属性というか特徴を思い浮かべて、書いてみてください。

オフィス街にあるので20代~40代 OL中心とか

製造業の工場へ仕出し弁当を提供している。工場は20~50代 男性中心など

■ お客さんからしてほしいと言われた事

常連さんなどから、たとえば「なかなか食べに行ったり飲みに行ったりできないので、デリバリーサービスを始めてほしい」とかいう要望があったり、「オンライン注文が出来るようになってほしい」とか雑談レベルでも言われた要望を思い返してみてください。

■ コンセプトを考える

こういった現状の状況や、お客さんの要望などを踏まえて、「誰に」「何を」「どうやって」「どのように」「いつ」提供するか考えます。

お客さんのためでもありますが、要は自分のお店や会社がこれからも事業を継続できるような事業の展望に沿って考えてゆきます。

「やりたいこと」から一歩進んだ考え方です。まぁ、ちょっと細分化しただけなんですが、それでも補助金利用の際、事業計画を策定する際にぼんやりしていた頭の中をすっきり整理できます。

■ 「誰のために」を考える。

いわゆる経営理念ですね。お客さんへの思い、自分が守ってゆきたいもの、挑戦したいこと、従業員への思い。こうした思いを書き出してみるのは大事です。軸になります。

ステップ2 補助事業を選ぶ

上記を踏まえて、適した補助事業を選択するわけですが、大事なのは「計画の中身」とのシンクロ率と、要件に合致するかです。

まず最初に要件についてお話したいと思いますが、

先ほど従業員数についてお話ししましたが、「小規模事業者」だけしか応募できない補助金もあります。(小規模事業者持続化補助金

それから補助金によっては、「給与支給額の総額年率1.5%上昇の計画を従業員に表明」することなどの要件(ものづくり補助金

また、売上の推移もまとめてもらいましたが、ある一定の期間中、新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが減少した事業者のみ、申請できる補助金もあります。(事業再構築補助金

詳しくは後述します。

で、そういった要件をいったん頭に入れていただいて、「やろうとしている事」とのシンクロ率を見て行きます。

ケース1 チラシや特別キャンペーンなど広報を充実して、事業の継続を図りたい

marketing posters and ads on wall
Photo by Valeriia Miller on Pexels.com

→ 5名以下の従業員数(常時使用する従業員)であれば「小規模事業者持続化補助金 通常型」(商工会議所)(商工会

広報費を経費に含むことが出来る、比較的汎用性の高い補助金です。広報などで課題の解決を図ろうとする場合、まず最初に検討していただければと思います。

→ 5名以上の従業員数で小規模事業者にあたらない場合

直接の広報費というよりも施策や新しい取り組みの中身により注力してゆく段階の事業規模になるかと思います。ものづくり補助金の低感染リスク型や事業再構築補助金では広報費も一部経費として認められているケースもありますが、直接の内容とすることは出来ないので、検討が必要です。

ケース2 ECサイトや非対面型のサービス(デリバリーなど)を新たにはじめたい

小規模事業者持続化補助金 低感染リスク型ビジネス枠がオススメです。

事例がここに載っています。

この補助金に関しては、ワタクシの動画でも解説しておりますので、よろしければご覧ください。

ケース3 事業の再編、新展開を思い切って!

文字通り、事業再構築補助金を指しておりますが、なかなか難しい展開でもあります。

補助金というのは基本、「強みを活かして、課題を克服」という事業計画に則って行う必要があり、また大きなリスクを背負って新事業展開を計画するのはとても勇気がいります。

事例を紹介しましょう。

事業再構築補助金は、「事業再構築指針」に従って事業計画を策定する必要があります。

この事例は「業態転換」という指針に従って申請した事例です。

店舗を縮小し、今後3~5年の事業計画期間終了後にテイクアウトの売上が総売り上げの10%以上となる必要があります。

ステップ3 補助金のデメリットを知る

自社の定点観測を行い、事業計画に従って補助金を選んだとして、実際に申請するには、まずは補助金の事を知らなければなりません。

後で、「こんなことなら申請なんかしなきゃよかった」と思わないように、デメリットを知っておく必要があります。

デメリット1:補助金は原則「後払い」

デメリットと言っていいのかどうかはなんとも言えないところで、これはそういうものなんですが、補助金というのは基本的に。原則「清算後払い」です。

つまり、事業が完了し、全ての書類を揃えて審査に回し、確定した金額が振り込まれます。

つまり、実際に経費の支払いは自社で資金調達を行い、実施する必要があります。

これはしっかりと頭に入れておく必要があります。自社の経営状況または資金調達の見込みなどを考えておきましょう。具体的に。

デメリット2:確実に採択されるわけではない

どの補助金でもそうですが、しっかり準備して臨んだとしても確率は高くなる可能性はありますが、100%採択されるとは限りません。

デメリット3:交付決定通知されるまで事業に着手できない場合がある

原則、採択発表があり、交付決定通知が届いてから事業スタートとなりそれ以前に支出された経費は補助事業対象外経費となってしまいます。

小規模事業者持続化補助金 低感染リスク型ビジネス枠や事業再構築補助金ではある期間中支出された経費に関して、遡って経費にすることは可能ですが、全額ではありません。

補助事業と自社の商機などを見極め、無理くりなスケジュールとなるようなら見送ることも必要です。

デメリット4:煩雑な事務作業やPCスキルなどが要求される。

補助事業はいたって事務的で、かなり正確な支出と書類管理が要求されます。また、オンライン申請の際は使いにくいシステムとも格闘し、実績報告等の採択後の清算に関する事もネット環境で行う必要があります。

証拠書類の収集・保管、PC入力など事務的なスキルは必須であるとあらかじめ知っておきましょう。

ステップ4 申請の準備をする

strong sportsmen ready for running on stadium
Photo by Andrea Piacquadio on Pexels.com

さて、ここまできたら申請準備に入ります。

ここからは、補助金の申請準備という事で、どの業種も同じ手続きを踏んでゆき、心構えを整える形になります。

申請までの準備期間として、どんなにギリギリでも締め切り1か月前にははじめましょう。

では、申請準備の手順の紹介です。

1、gBizIDの取得

割とオンライン申請が主流です。経済産業省系の補助金の申請を行う場合、Jグランツというシステムを利用しますが、そのシステムを使用するために、このgBizIDというIDを取得する必要があります。基本的にプライムのアカウントを取得します。

この取得方法ですが、
GビズIDプライムアカウント作成手順
① gBizIDから、申請書を作成し、プリントアウト
② 印鑑(法人:代表者印 個人事業主:個人の実印)を押す
③ 印鑑(登録)証明書を取得(代表者印:法務局 個人:市区町村)
④ 事務局へ郵送
⑤ 携帯(申請書に記載した携帯番号)に取得確認のメッセージが届く。→確認し、アクセスし、取得完了

クイックマニュアルはコチラ

だいたい、1~2週間、混み合っている時で3週間かかるときもあります。これは必須ですので、取得はお早めに。。

2、必要書類の用意

必要書類は各補助事業により異なりますが、準備としては少なくとも以下の物を用意しておきましょう。

1,決算書(確定申告書)を過去2~3年分

2,必要機材または設備やシステム、WEBページなどの見積もり、仕様

3,システム構築の工程表や設備導入スケジュール

経営状況の確認も含めて、まずは全体の予算感と工程、どういったものを作るとか導入するとかよく知っておく必要があります。

機械屋やベンダーにおまかせっきりでは申請はとても難しいものとなります。

また、ものづくり補助金など加点項目としてあらかじめ認定されたものがあれば、認定書の準備(経営革新計画、事業継続力強化計画)、賃上げ加点のための書類、緊急事態加点の場合は証明書類の準備など、のちのち絶対に必要となる書類は早めに用意しておくことをお勧めします。

3、事業計画書の作成

※小規模事業者持続化補助金 低感染リスク型ビジネス枠の事業計画書作成に関してはコチラの記事もご参考に(無料記事です)

補助金申請の一番の山場となるのが、この事業計画書の作成になります。

各補助金の審査項目を抑えながら、自社の強み、課題を明確にして、どういった事業を行うか。それがどのような効果をもたらすか。こういったことを、指定された様式で、枚数でか空いてゆく必要があります。

基本的にPCのワープロ打ちで、作成します。手書きはやめておきましょう。

作成期間は短く見積もっても2週間は欲しいところです。見直しながら、できるだけ読み手(審査員)が読みやすく、かつ思いが伝わるような申請書は文章のプロ・行政書士をもってしても難易度は高いです。

事業計画書の書き方については、上記の記事のみ当事務所では公開しておりますが、いずれ主要補助金は網羅してゆきたいと思います。

現時点ではお問い合わせください。一緒に考えてゆきましょう。

ステップ5 いよいよ申請!

補助金のつかいかたですが、前半のクライマックス。申請です。

ほとんどの補助金は必要書類をPDFファイル等にしてオンライン申請です。

各補助金の事務局ホームページには「申請の手引き」が公開されています。

しっかり読み、「書類不備がないように」申請しましょう!

ステップ6 採択発表後

採択発表は申請締め切り日からだいたい1~2か月後です。

採択発表は中小企業庁ホームページ、そして補助金事務局ホームページで公開されます。

採択発表が行われ、採択者一覧に自社の名前があれば「採択」なければ「不採択」

Jグランツでも採択結果が届きます。

採択された場合は、資金調達などの段取りを行い、交付決定通知を待ち(申請の経費に不備などあれば修正依頼が届きます。)、届き次第、事業スタートです。

不採択だった場合

不採択だった場合、年度最終の補助金であった場合は、次年度同じ補助金が行われるかはその時の政情や社会情勢にもよるので、いったん補助金の事は忘れても仕方ないので他の計画を立ててゆくのが良いですが、年度途中の場合、通年で行われている補助金は「次」に向けて、不採択の理由を検証しましょう。

事務局の見解を電話で聞くこともできます。

また、専門家へ聞くことも可能です。

もし、時間が許すなら、次回に向けての準備に入るのも一つの手です。

補助金以外で使えるもの

飲食店の事業者さんで「補助金以外」に使える施策をいくつか挙げております。

■ 月次支援金(期間限定の措置)

■ 事業継続力強化計画

事業所の災害に対する減災・防災措置に関して、発電機などの購入に対して金融支援や税制優遇が行われる認定計画となります。

■ 経営力向上計画

事業所の「労働生産性」を高めるための計画に対し、金融支援や税制優遇措置、持続化補助金の加点などが行われます。

この辺の計画については過去の記事などをご参照ください。