きたごう行政書士事務所よりお知らせ

農業と補助金

はじめに

農業をしていて、新しい機械や設備の導入や、新たな技術を取り入れたりする場合、かなり資金が必要になります。なかなかこうした設備更新や導入を簡単にできるわけもなく、農協などでローンを組んで導入したりして賄うことが多いのではないでしょうか。

さて、農家も農業も我が国の立派な産業ですし、何か国から補助事業はないの?と思います。ですが、補助金というと経済産業省(中小企業庁)が主に行っていることが多く、当事務所の言う「補助金サポート」というのも「事業再構築補助金」や「中小企業生産性革命推進事業(ものづくり補助金など)」を想定しているというのが実際のところです。

とはいえ、農業を管轄する「農林水産省」という省庁でも、様々な補助事業を行っています。いくつかご紹介などをさせていただこうと思います。

参考資料

今回、参考にしたのは下記のパンフレットです。

農業経営支援策活用カタログ2024 出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/n_pamph/180529.html)

機械・設備の導入を行いたい

農地利用効率化等支援交付金

タイプ対象者支援内容特徴
融資主体支援タイプ将来の地域の農業を担う者として目標地図に位置付けられた者( 事業実施年度内に目標地図に位置付けられることが確実な者)– 補助率: 事業費の3/10以内
– 配分上限額: 1経営体当たり300万円(必要な要件を満たす場合は600万円)
スマート農業、集約型農業経営、グリーン化に優先枠を設置
融資主体支援タイプ(先進的農業経営確立支援タイプ)– 広域に展開する農業法人等– 補助率: 事業費の3/10以内
– 配分上限額: 個人1,000万円、法人1,500万円
経営高度化に必要な農業用機械・施設の導入支援
条件不利地域支援タイプ– 農業者等の組織する団体
– 農家3戸以上が構成員に含まれ、農家が全体の議決権の過半を占める団体
– 補助率: 事業費の1/2以内(農業用機械は1/3以内、沖縄県の場合等を除く)
– 配分上限額: 1経営体当たり4,000万円
– 経営規模が小規模・零細な地域の意欲ある経営体を育成
– 共同利用機械・施設の導入支援
– 農家1戸当たりの平均農地面積が0.5ha(北海道は2ha)未満、かつ農地面積が0.5ha(北海道は2ha)未満の農家が5割以上を占める地域が対象

問い合わせ先

  • 最寄りの市町村、都道府県
  • 農林水産省担当課
    • 経営局経営政策課担い手支援第1班・第2班
    • 電話: 03-6744-2148

目標地図とは?

将来の農業の在り方や、地域の農地の効率的かつ総合的な利用を図るために誰がどの農地を利用していくのかを一筆ごとに定めた地図のことであり、地域計画の一部となるもの。

どんな人が活用できるのか。

地域の農業を支える担い手

  • 地域の農業を将来にわたり支え、発展させる意欲を持つ農家や農業団体
  • 地域の農業経営を集約化し、効率的にすることを目指している人や団体

スマート農業やグリーン化に取り組む経営者

  • 最新の農業技術やスマート農業を導入し、持続可能な農業経営を実現しようとする人や団体

経営規模が小さく、条件が不利な地域の農業者

  • 経営規模が小さく、地理的条件や経済的条件が不利な地域の農業者
  • 共同利用機械や施設の導入を通じて経営の効率化と改善を目指す団体

産地生産基盤パワーアップ事業のうち収益性向上対策

項目詳細
目的産地全体の収益性向上のための機械導入や施設整備等を総合的に支援
対象者地域農業再生協議会等が作成する「産地パワーアップ計画(収益性向上タイプ)」に参加する農業者、農業者団体(農業協同組合、農事組合法人、農地所有適格法人、その他の農業法人、その他農業者が組織する団体)
支援内容整備事業(補助率:1/2以内)
乾燥調製施設、穀類乾燥調製貯蔵施設、集出荷貯蔵施設、農産物処理加工施設、生産技術高度化施設(低コスト耐候性ハウス等)
生産支援事業・効果増進事業(補助率:1/2以内等)
① コスト削減に向けた高性能な農業機械のリース導入・取得
② 雨よけハウス等、高付加価値化に必要な生産資材の導入
実施要件– 成果目標(生産コストの10%以上の削減、販売額の10%以上の増加、労働生産性の10%以上の向上等)の基準を満たす
– 面積要件等を満たす
– 整備事業や農業機械の取得にあたっては費用対効果分析を実施(投資効率が1.0以上であること)
活用例施設野菜団地の育成
パイプハウスや高度環境制御装置の導入等による施設野菜団地の育成、収益性の高い施設野菜産地の形成
省力的・効率的な栽培体系の導入
省力化機械の導入等により、果樹栽培の省力化・効率化を推進
効率的な施設整備の推進
集出荷貯蔵施設、農産物処理加工施設の整備を通じた集出荷機能の改善、高付加価値化による産地の収益力強化
問い合わせ先最寄りの市町村、都道府県、農林水産省担当課(経営局経営政策課担い手支援第1班・第2班)
電話: 03-6744-2148

ものづくり・商業・サービス補助金

項目詳細
目的新製品・サービス開発や生産プロセス等の省力化のための設備投資等を支援
対象者資本金3億円以下または常時使用する従業員の数が300人以下の法人または個人
※ 農事組合法人、農業協同組合は対象外
支援内容新製品・サービス開発や生産プロセス等の省力化のための設備投資等を補助率1/3~2/3で支援
※¹補助率は申請枠・類型や従業員数により異なる
※²補助上限額は最大1億円の範囲内で、申請枠・類型や従業員数により異なる。補助対象経費ごとに上限額が決まっている
補助率1/3~2/3
補助上限額最大1億円
注意事項補助率および補助上限額は申請枠・類型や従業員数により異なる

いつものもの補助です。事業再構築補助金では一次産業に関する(栽培用)の設備は導入できませんが、ものづくり補助金では対象経費とすることが可能です。

ものづくり補助金の詳しい解説はどうぞこちらをご覧ください

中小企業経営強化税制、先端設備等導入計画に係る固定資産税の特例措置、中小企業投資促進税制

税制の名称対象者支援内容補助対象設備特記事項
中小企業経営強化税制青色申告をしている中小企業等
(資本金1億円以下の法人、従業員数1,000人以下の個人等)
※農協、農事組合法人は対象外
法人税・所得税について即時償却または10%の税額控除
2025年3月末までに取得した設備が対象
・160万円以上の機械装置
・30万円以上の器具備品、工具
・60万円以上の建物付属設備
・70万円以上のソフトウェア
認定申請に際してメーカー等を通じて工業会等発行の証明書を入手し、「経営力向上計画」の認定を受ける必要があります。
先端設備等導入計画に係る固定資産税の特例青色申告をしている中小企業等
(農業者を含む)
※農協、農事組合法人は対象外
固定資産税が3年間1/2に軽減
特定要件を満たした場合、5年間3分の1に軽減
・160万円以上の機械装置
・30万円以上の工具、器具備品
・60万円以上の建物付属設備
「先端設備等導入計画」の認定を受けた後、設備を取得する必要があります。
中小企業投資促進税制青色申告をしている中小企業等
(農業者を含む)
※農協、農事組合法人も対象
法人税・所得税について30%の特別償却または7%の税額控除
2025年3月末までに取得した設備が対象
・160万円以上の機械装置
・3.5トン以上のトラック等
・120万円以上の測定工具、検査工具
・70万円以上のソフトウェア
資本金3,000万円超の法人は7%の税額控除。

特記事項

  • 中小企業経営強化税制:工業会等の証明書が必要、経営力向上計画の認定が必要。
  • 先端設備等導入計画に係る固定資産税の特例:労働生産性向上の見込みが必要、先端設備等導入計画の認定が必要。
  • 中小企業投資促進税制:資本金3,000万円超の法人は7%の税額控除。

補足情報

  • 農業経営基盤強化準備金制度は中小企業経営強化税制および中小企業投資促進税制とは併用不可。ただし、先端設備等導入計画に係る固定資産税の特例措置とは併用可。
  • 認定農業者、認定新規就農者が計画的に資金を積み立てて機械を取得する場合には農業経営基盤強化準備金制度も活用可能。

農山漁村振興交付金

対策・事業名対象となる方支援内容特徴・実施要件
最適土地利用総合対策農業者を含む地域住民中山間地域等における農用地保全に必要な地域ぐるみの話合いによる最適な土地利用構想の策定、基盤整備等の条件整備、鳥獣被害防止対策、粗放的な土地利用等を総合的に支援地域ぐるみの話合いを通じて計画を策定し、農用地の保全と利用を最適化するための支援
中山間地農業推進対策地域農業再生協議会等が作成する「産地パワーアップ計画(収益性向上タイプ)」に参加する農業者、農業者団体等収益力向上や販売力強化等に関する取組、農村RMOの形成、デジタル技術の導入・定着を支援収益性向上や販売力強化、デジタル技術の導入等を推進する取組
山村活性化対策(山村活性化対策事業)農業者を含む地域住民山村の特色ある農林水産物や、固有の自然・景観、伝統文化等の地域資源を活用した新商品の開発・販売等を支援地域資源を活用して新商品の開発や販売を行い、地域経済の活性化を図る
農山漁村発イノベーション対策農業者、農林漁業者を含む地域住民農林水産物や農林水産業に関わる多様な地域資源を活用し、付加価値を創出することによって所得と雇用機会を確保する取組農林水産物以外の多様な地域資源も活用し、6次産業化を発展させたイノベーション取組を支援
情報通信環境整備の推進農業者を含む地域住民農業水利施設、農業集落排水施設等の農業農村インフラの管理の省力化・高度化やスマート農業の実装、地域活性化を促進するための情報通信環境の整備スマート農業の実装や地域活性化を促進するための情報通信環境の整備
都市農業機能発揮対策都市農業者、行政機関等都市農業の振興に必要な取組を支援都市農業経営の円滑な継承、都市住民への農山漁村への関心の喚起、マルシェ開催、防災協力農地の機能強化等の取組を支援

都市農業機能発揮対策の詳細

  • 都市農業機能発揮支援事業:都市農業経営の円滑な継承を促し、都市農業の多様な機能の発揮を通じた都市住民の農山漁村への関心の喚起を図る取組。
  • 都市農業共生推進等地域支援事業:都市住民と共生する農業経営の方策のための検討・調査や、都市住民への理解醸成、市民農園・体験農園開設等。
  • 防災協力農地の機能の強化への支援:防災協力農地に指定された都市農地の機能維持・強化のための取組や簡易な施設整備等。
  • 都市農地創設支援型:都市農地、農的空間の創設等への支援(令和5年度拡充)。

まとめ

農業をするには、新しい機械や設備を導入するためにたくさんのお金がかかります。多くの農家は、これを自分たちでまかなうのが難しく、ローンを組んで対応しています。しかし、こうした設備投資は、生産性を上げたり、効率よく作業をしたりするためにとても重要です。

国は、農家を助けるためにいくつかの補助金制度を提供しています。例えば、農地利用効率化等支援交付金や農山漁村振興交付金などがあります。これらの制度は、農家が新しい機械や設備を導入する際に資金を支援し、地域全体の農業を効率化し、持続可能な発展を目指すものです。

農地利用効率化等支援交付金は、農家が集約型農業やスマート農業を進める際に必要な機械や施設の導入を支援します。また、産地生産基盤パワーアップ事業は、収益性を高めるための高性能な機械・施設の導入を支援します。そして、農山漁村振興交付金は、地域の農家が新しい仕事を作り出し、収入を増やし、雇用を拡大するための取り組みを総合的に支援します。

これらの支援制度は、農家が資金不足の問題を解決し、生産性を向上させるための助けになります。しかし、申請の手続きや条件が複雑であるため、多くの農家にとっては使いづらい面もあります。特にスマート農業を導入するには、技術的な知識やデジタル技術の利用が必要であり、これに対応するための支援も求められています。

これらの制度をうまく活用するためには、農家や農業関連団体が計画をしっかり立てて、必要な条件を満たすことが重要です。市町村や都道府県の窓口、農林水産省の担当課に相談することで、適切な支援を受けることができます。これらの支援制度は、農家の努力を後押しし、より良い農業経営を実現するための重要な手段となります。

お手伝いできることがあればお気軽にお声掛けください。

父の代まで米農家として御殿場コシヒカリを作っていたワタクシ。農家の味方です!